【自習ご報告:4】それぞれの旧暦カフェ・ワークショップ 特別自習(8) 月と菊。そして山

◉旧暦カフェ 「やってみる」自習シリーズ

今回の「旧暦カフェ」自習は「重陽」、報告を引き続きお届けします。
https://www.xpl.jp/ws-20221004jisyu/


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韓氷さん(東京都)
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◉月

数日前、たまたま近くの菓子屋に行ったら、店員さんが「明日は十三夜だから、月見団子はいかがですか」と店内でアナウンスをしていました。
十三夜という風習は、中国にはないようです。
中国では、「十五的月亮十六圆」(八月十五日の月よりも翌日の月はもっと満月だ)という諺からも窺えるように、やはり「円満」を好むようですね。
一方、日本ではまだ満月になっていない、少し欠けた月の美しさをも楽しむ、というところに、美意識の違いを感じます。

◉菊

菊の花をめぐるイメージも、日中の間ではかなり違うようです。
日本では仏花のイメージが強いようですけど、中国では(寒い季節に咲くから)君子の象徴とされてきました。
ちなみに君子の象徴とされる植物は、他に松、竹、梅などがあります。

◉登高

中国と韓国にこの風習があるけど、日本にはないようですね。なぜでしょうか。登高の起源を調べたら、次のような諸説がありました。

*山岳崇拝
春秋戦国時代から、登山して祈祷する風習がすでにあるそうです。空が高くて空気が爽やかなこの季節は、「登高望遠」するのに最適な季節だと言います。
一方、中医学では、秋は「肺臓」を養う季節だとされています。「薬聖」として尊敬される隋唐時代の孙思邈はその医学書の中で、重陽節に必ず登高すべきだと書いています。(“以畅秋志”)《千金方・月令》:“重阳日,必以看酒登高远眺,为时宴之秋赏,以畅秋志。酒必采茱萸、菊以泛之,即醉而归。”

* 災害を避ける説
陰陽学によれば、重陽節は陽の極みである「九」が重なる日であり、この日から、天気が降りて来て、地気が上がっていく。陰と陽という二つの気がぶつかり、邪気が発生するため、登高してそれを避ける必要があるという。

*「小秋収」という説
この季節になると、農作物の収穫が一段落したので、農閑期にあたります。一方、山の中では野生の果物や植物、薬草などが成熟しているので、農民はそれらを取りに山に入るので、「小秋収」とも呼ばれるそうです。

* 春に「踏青」するのに対して、この季節には「辞青」(「青」い植物たちとお別れ)するそうです。

岸葉子さん(三重県)
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◉お月見の団子

子どもの頃の記憶では、白くて丸い団子で、3段ぐらいに積み上げていたような…お盆やお彼岸のお供え団子を初めて見た時、お月見団子に似ていると思ったような記憶があります。
団子以外に食べるものは、サツマイモかな?

◉月見に供えるものは?

ススキ、萩の花、オミナエシなどと、お月見団子、サツマイモ、サトイモなどもあったかな?

◉月に関すること

「お月見 旧暦八月十五日はお月見で、萩・薄・女郎花をとって花瓶に挿し、栗・芋(里芋)・柿・団子をお供えした。子どもたちはお供えをたばり(いただく)にいったが、今はその風習は行われていない。」『鵜殿村史』より ※鵜殿村→現在の紀宝町鵜殿地区

「仲秋の名月 十五夜 ススキやオミナエシ、萩などを花瓶にさし、月見団子(神内地区)、サツマイモやサトイモ(成川地区ではサトイモの葉の上にのせる)、果物(柿)、菓子を供える。閏年にサトイモの子を十三個、平年は十二個供えた(桐原地区)。子どもたちが各家を回って供え物(菓子)をタバル(頂戴する)習慣があり、現在も行われる地区がある。」『紀宝町誌』より

・ 三重県の熊野市、御浜町、紀宝町などには、お月見の時に子どもたちが地域の家を回ってお供え物(今はお菓子)をもらう「たばらして」という習慣があります。

・ 三重県熊野市五郷小学校の行事(9月9日のところ)→http://www.kumano-city.ed.jp/esisato/schoollife/2014/2014.9.html

・ 熊野市観光協会→https://www.facebook.com/kankoukyoukai.kumanoshi/posts/1928150874018142
※「和製ハロウィン」という説明の仕方はちょっと…苦笑

・ 東紀州ほっとネットくまどこ→http://kumadoco.net/area/kihou/news/view.cgi?no=4054

◉菊にまつわる記憶

先日、ちらっと見ただけで記憶が曖昧なのですが、和歌山県太地町では、昔、重陽の節句に重箱にお餅?団子?を入れて菊の花を添えて贈ったらしい?
他の調べものの最中だったので…また探してみます。

◉「登高」

「登高」について全く知らなかったので、ネットで検索したら、真っ先に出てきたのが「杜甫『登高』」!
あの「独り台に登る」は「登高」だったんですね!「台」って何?って思っていたのです。漢詩はなんか好きで憧れてたのですが、学生時代ほとんど授業がなかった…。もっと勉強しておきたかったです。



下中菜穂より岸さんへのお返事
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お月見用の「たばる」お菓子がこんなに売っているなんてびっくり!
かつて、お団子や畑の野菜を月見の晩に勝手にとってもいいとされていたこと。
資料では散々読んではいたのですが、まさか、まだその風習がこんな形で現役だったとは!
驚きです。やはり紀州は知りたいことがたくさん詰まった宝庫ですね。

岸さんより下中菜穂へのお返事
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「たばらして」は、実際に見たことはないのですが、以前、近隣の町で「たばらして」の最中に、子どもが交通事故に遭い亡くなったことがあってから、「交通安全」を強く訴えるようになりました。
本来のお月見の行事とかけ離れているので、もうやめようと言う人もいるようです。↓
https://plaza.rakuten.co.jp/syouwa34henkutu/diary/201809240001/
伝統行事をちゃんと伝えていくのは、とても難しいですね。「和製ハロウィン」なんて言っちゃいけない。笑

それから、お月見団子の思い出をひとつ。
私の人生初の料理?は、幼稚園(カトリックでしたが)で作ったお月見団子でした。
お団子作りは得意でしたが、ほんとに食べられるお団子を作った感動を今も覚えています。

最後に、東京の農家の方が書いた本から…
「(十五夜の)十日前から米を洗い、乾かし、粉挽き機にかけてだんごにする米粉を用意するのは端午の節句のときと同様ですが、量はかなり多め。彼岸や十三夜のだんごの分も一緒に挽いてしまうので、全部で三升ほどになります。」
※『自然のめぐみを楽しむ昔ながらの和の行事』(石坂昌子/著 家の光協会/刊)より

十五夜のお月見飾りの団子は十五個、十三夜は十三個、ピラミッドのように盛り、てっぺんの団子は他のよりやや大きく丸めるそうです。お膳にのせ、その横にサツマイモや栗、リンゴなどを並べ、お膳の脇にススキ(数は十五本、または五本)を立てて完成とのこと。
米粉を作るところから始まるのがすごい!

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